07/02/2009

父父SS馬の隠れた快挙

上半期のグランプリは、アグネスタキオン産駒ディープスカイがダントツ人気を裏切ったものの、ステイゴールド産駒ドリームジャーニーが優勝。これは、SS2世種牡馬を父にもつ牡馬にとって、記念すべき勝利となった。古馬芝2000m以上G1、いわゆる「古馬王道G1」の初制覇だったのである。
SS2世種牡馬の産駒でJRAG1を勝ったのは、いまのところ以下の20頭。

ダイワスカーレット 07年桜花賞 07年秋華賞 07年エリザベス女王杯 08年有馬記念
カネヒキリ     05年JCダート 06年フェブラリーS 08年JCダート
ブエナビスタ    08年阪神JF 09年桜花賞 09年オークス
ディープスカイ   08年NHKマイルC ダービー
ドリームジャーニー 06年朝日杯FS 09年宝塚記念
キストゥヘヴン   06年桜花賞
シーザリオ     05年オークス
キャプテントゥーレ 08年皐月賞
アンライバルド   09年皐月賞
ロジユニヴァース  09年ダービー
ザッツザプレンティ 03年菊花賞
デルタブルース   04年菊花賞
ロジック      06年NHKマイルC
ジョーカプチーノ  09年NHKマイルC
コイウタ      07年ヴィクトリアマイル
エイジアンウインズ 08年ヴィクトリアマイル
リトルアマポーラ  08年エリザベス女王杯
ブルーメンブラット 08年マイルCS
ファイングレイン  08年高松宮記念
ツルマルボーイ   04年安田記念

牡馬の古馬G1ウィナーは、ドリームジャーニーのほかには、カネヒキリ、ファイングレイン、ツルマルボーイの3頭しかいない。今やどっちを向いてもSSの孫だらけなのだから、今後は当然増えてくるだろうが、成長力があってしかるべき菊花賞馬2頭や、上の世代が壁になっているディープスカイの体たらくをみる限り、SSを父の父にもつ牡馬は「底力不足」の疑い濃厚だ。

一方、母の父にSSをもつG1ウィナーは、以下の11頭。

アドマイヤムーン  07年宝塚記念 07年ジャパンC
ヴァーミリアン   07年ジャパンCダート 08年フェブラリーS
ラインクラフト   05年桜花賞 05年NHKマイルC
トールポピー    07年阪神JF 08年オークス
フサイチリシャール 05年朝日杯FS
セイウンワンダー  08年朝日杯FS
レジネッタ     08年桜花賞
ソングオブウインド 06年菊花賞
アサクサキングス  07年菊花賞
スクリーンヒーロー 08年ジャパンC
サクセスブロッケン 09年フェブラリーS

当然のことながら、母父SS馬は父父SS馬よりはるかに少ない。頭数比で言えばこれまでのところ、ざっと6対1。それでいて、G1ウィナーは父父SS馬の半数にもなるのだから、走る確率は明らかに「父父SS馬<母父SS馬」と言える。
母父SS馬は、牡馬も優秀。古馬G1ウィナーは4頭を数え、うち2頭はJCホース。宝塚記念では、サクラメガワンダーがG1初連対をはたし、スクリーンヒーローも復調の兆し。この春はシンゲンという晩成の上がり馬も現れた。
クラブ馬への出資やPOGドラフトの際は、母父SS馬を狙うのが断然、効率的だ。

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06/26/2009

ラフィアンと古馬G1

春の天皇賞で大金星をあげたマイネルキッツは、言わずと知れた「サラブレッドクラブ・ラフィアン」の所有馬。前総帥、岡田繁幸氏のダービーにかける執念はあまりにも有名だが、初の天皇賞馬誕生も、同クラブにとって歴史的瞬間であったことは間違いない。
現3歳世代はパッとしなかったが、マイネル軍団といえば「早期デビュー」がお家芸。その分、古馬になってからの成長力はいまひとつ。4歳以降、中央の平地G1に出走した馬は、今のところ以下の19頭しかいない。

マイネルブリッジ 
天皇賞秋(96年・17着) 天皇賞秋(97年・7着) 
有馬記念(96年・3着) 有馬記念(97年・11着)
天皇賞春(98年・12着) フェブラリーS(97年・12着)

マイネルマックス
マイルCS(00年・6着) 高松宮記念(00年・7着)
安田記念(00年・15着) スプリンターズS(00年・9着)

マイネルラヴ
スプリンターズS(99年・4着) スプリンターズS(00年・5着)
高松宮記念(00年・16着)

マイネルモルゲン
安田記念(04年・7着) マイルCS(04年・10着)

マイネサマンサ
エリザベス女王杯(05年・14着) ヴィクトリアマイル(06年・10着)

マイネルスケルツィ
高松宮記念(07年・6着) 安田記念(07年・10着)

マイネルワイズマン
天皇賞春(98年・13着)

マイネルヒーロー
高松宮記念(99年・15着)

マイネルブライアン
フェブラリーS(03年・8着)

マイネルアンブル
天皇賞春(03年・12着)

マイネルプレーリー
天皇賞春(03年・15着)

マイネヌーヴェル
エリザベス女王杯(04年・13着)

マイネルソロモン
マイルCS(04年・4着)

マイネルアルビオン
高松宮記念(06年・17着)

マイネカンナ
ヴィクトリアマイル(08年・13着)

マイネルシーガル
マイルCS(08年・10着)

マイネルレーニア
マイルCS(08年・18着)

マイネルキッツ
天皇賞春(09年・1着)

マイネレーツェル
ヴィクトリアマイル(09年・9着)

成績は「1-0-1-30」とほぼ壊滅的。しかもG1とはいえ、格の低いレースばかり。芝中長距離の王道では、天皇賞春に5頭、天皇賞秋に1頭、有馬記念に1頭が出走しただけで、マイネルブリッジを除けば天皇賞春出走馬が4頭のみ。その1頭がマイネルキッツであるわけだが、他の3頭は12着、13着、15着。キッツの盾制覇がどれほどの偉業であったか、改めてお分かりいただけよう。
宝塚記念はJCとともに、マイネル軍団未経験のレース。G1初挑戦で天皇賞馬の称号を得たマイネルキッツが、阪神重賞未勝利の松岡を背に、またまたあっと言わせるか。天皇賞春勝ち馬は、目下出走機会6連続連対中。アグネスタキオンの死とウオッカの回避がディープスカイを断然人気に押し上げるなら、ヒシミラクルの再現を期待してみたくなる。

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06/19/2009

今年も新種牡馬に要注目

ダービーから3週。いよいよ2歳戦がスタートする。2007年産の2歳世代は、SS産駒が姿を消してから4世代目。今年はSS2世種牡馬ネオユニヴァースの初年度産駒が大活躍したが、2009年新種牡馬の産駒はどうか。
2007年産駒がファーストクロップとなる国内繋養種牡馬は38頭。産駒数の順に並べると以下のようになる。

125頭 ゼンノロブロイ   サンデーサイレンス×マイニング
117頭 アルカセット    Kingmambo × Niniski
115頭 ロージズインメイ  Devil His Due × Speak John
114頭 タップダンスシチー Pleasant Tap × Northan Danser
104頭 デュランダル    サンデーサイレンス×ノーザンテースト
96頭 ストラヴィンスキー Nureyev × Blushing Groom
79頭 パゴ        Nashwan × Nureyev
54頭 アドマイヤマックス サンデーサイレンス×ノーザンテースト
47頭 マイネルセレクト  フォーティナイナー×ラッキーソブリン
46頭 アドマイヤドン   ティンバーカントリー×トニービン
45頭 ボーンキング    サンデーサイレンス× Sadler's Wells
42頭 スパイキュール   サンデーサイレンス× Crafty Prospector
40頭 ザッツザプレンティ ダンスインザダーク× Miswaki
33頭 シックスセンス   サンデーサイレンス× デインヒル
33頭 トーセンダンス   サンデーサイレンス× Nijinsky
23頭 ウインラディウス  サンデーサイレンス×マルゼンスキー
22頭 ウインデュエル   サンデーサイレンス×ノーザンテースト
18頭 サンライズペガサス サンデーサイレンス×ブライアンズタイム
15頭 チアズブライトリー サンデーサイレンス×アンバーシャダイ
14頭 カルストンライトオ ウォーニング×クリスタルグリッターズ
13頭 アポインテッドデイ Red Ransom × Danzig
13頭 ミスキャスト    サンデーサイレンス×トニービン
12頭 ダイタクバートラム ダンスインザダーク×サクラユタカオー
10頭 ヒシミラクル    サッカーボーイ×シェイディハイツ
10頭 トーヨーヒリュウ  サンデーサイレンス× Lyphard
10頭 ロイヤルウエスト  Gone West × Caerleon
7頭 キングリファール  クリスタルグリッターズ× Coastal
5頭 ナスダックパワー  タヤスツヨシ×ナイスダンサー
4頭 カオリハイパー   フォーティナイナー× Argument
3頭 インターハイクラス ダンシングブレーヴ× Irish River
2頭 カーム       サンデーサイレンス× Caerleon
2頭 ハギノハイグレイド コマンダーインチーフ×ラシアンルーブル
2頭 トーシンブリザード デュラブ×ブレイヴェストローマン
2頭 フォーティダンサー フォーティナイナー×ノーザンテースト
1頭 ウエスタンメジャー ダンシングブレーヴ×ウエスタンシャープ
1頭 クラキングオー   スズカコバン×シングルロマン
1頭 ブラウンシャトレー ナグルスキー×ゲイメセン
1頭 インテリパワー   ルション×オウインスパイアリング

38頭のうち14頭がSS産駒。相変わらず多いが、このうち数年後も「職業=種牡馬」と言えるのは、せいぜい数頭だろう。シックスセンス、ボーンキング、トーセンダンスなどは、海外に輸出する手もあると思うのだが…。
SS3世種牡馬は、ザッツザプレンティ、ダイタクバートラム、ナスダックパワーの3頭。今のところダイタクリーヴァもツルマルボーイも成功していないように、SSの血といえども3代繋げるのは難しい。もっとも、SS直子という強力なライバルがいなくなった今では、SSの孫だけでなくSSの曾孫も、活躍の余地が広がっているはず。いずれはSS3世種牡馬も大物を出すに違いない。

開幕週に組まれている新馬戦は、3場土日1鞍ずつで計6鞍。出走馬は計64頭。うち新種牡馬の産駒は、デュランダルが4頭、アドマイヤマックスが3頭、パゴが2頭、タップダンスシチーが1頭。昨年は、新種牡馬プリサイスエンドが2日目に初勝利をあげたが、今年ははたして…。

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06/11/2009

なるか16年連続重賞制覇

ラストクロップが3歳となった2006年以降、228勝、97勝、43勝と、勝利数が急降下しているサンデーサイレンス。当然と言えば当然だが、やはり一抹の寂しさを禁じ得ない。今年はついに、ここまでわずか4勝。平地で片目が開いたのは5月になってから。先週土曜の東京9レースでアクシオンがあげた勝利が、今のところ最後の勝ち星となっている。
産駒が2歳馬だけの94年を除けば、初めて100勝の大台を切った一昨年も、G14勝を含む重賞19勝をあげて、リーディング1位を死守。7位に陥落した昨年も、G1勝ちこそ14年連続で途切れたものの、重賞は6勝をマーク。今年は重賞の連続勝利もついに15年で途切れてしまうのだろうか。
今年ここまで重賞に出走したSS産駒はのべ31頭いるが、うち掲示板に載ったのは以下ののべ11頭。

マルカシェンク   京都金杯2着
エアシェイディ   AJC杯2着
キングストレイル  AJC杯5着
キャプテンベガ   東京新聞杯2着
ソルジャーズソング シルクロードS2着
ブレーヴハート   ダイヤモンドS2着
キングストレイル  中山記念4着
エアシェイディ   中山記念5着
ソルジャーズソング オーシャンS4着
ソルジャーズソング 高松宮記念3着
キャプテンベガ   ダービー卿CT4着

今さらG1で勝ち負けできるはずもなく、G2以下も勝ちきるのは至難の業と言えそうな、決め手不足の馬ばかり。生命力が落ちてきた晩年の産駒だけに、それも致し方あるまい。
チャンスがあるとしたら、これから夏にかけての低レベルG3。今週のエプソムカップには、キャプテンベガ、ニルヴァーナ、メイショウオウテ、リキアイサイレンス、CBC賞にはソルジャーズソング、ピサノパテック、さらに東京ジャンプSにはニホンピロファイブが登録してきた。
意外に一番期待できるのは、前走オープンを勝って勢いに乗るニホンピロファイブかも。同馬が勝てば、SS産駒のジャンプ重賞ウィナーは、ウインマーベラスに次いで2頭目となる。
平地で「新星」となる可能性がわずかに残されているのは、SS産駒最後のクラシックとなった06年の菊花賞で格上挑戦ながら5着にきた素質馬、アクシオンだろう。先週の1000万条件は、2年3か月に及ぶ超長期休養からの復帰3戦目。トップハンデで出遅れながら、馬群を割って豪快に差し切ったレースぶりは圧巻だった。SS最後の大物に育つことを期待したい。

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06/05/2009

結果オーライの「伊藤雄戦法」

かの名伯楽、伊藤雄二元調教師は、93年のダービーを「狙って獲った」という。その年の牡馬クラシックは今年と同じく「3強」。ビワハヤヒデ、ナリタタイシンという強敵相手に皐月賞、ダービーの「二兎」を追うと、一兎も得ない恐れありとみて、皐月賞はステップレースと位置づけ、ウイニングチケットのピークをきっちりダービーにもっていったというのだ。
今年のダービーは、結果的にこの「伊藤雄戦法」をとることになったロジユニヴァースとリーチザクラウンが好走し、結果的に「伊藤雄戦法」に反してしまったアンライバルドが凡走することになった。いずれもこの2レースで極端な浮き沈みを経験してしまったが、終わってみればやはり3強だった、という点では16年前と同じだろう。

ロジユニヴァースの場合、皐月賞は本調子を欠いていた上に、不慣れなスピード競馬だったことが惨敗につながった。しかしダービーのパドックは、しぼんで見えた皐月賞とは段違い。伝え聞く状態と生の印象がこれほどかけ離れるのも珍しい。しかもこの馬場では、スピード競馬にも上がりの競馬にもならず、流れは向く。
リーチザクラウンはというと、皐月賞がきさらぎ賞以来の競馬で、馬体を戻しつつの仕上げ。当然、こちらも本調子であるはずがない。加えて、マイペースで行けないときのモロさも露呈し、これまた競馬にならず。しかしダービーはようやく万全の出来となり、実質マイペースの逃げも打てた。
つまり、この2頭にとって皐月賞は負けてやむなしのレース。しかも早々にタオルを投げたものだから、厳しいレースによる消耗はまったくない。結果、ダービーにはベストの状態で臨むことができたというわけだ。
それでも、ダービーが例年どおりの軽い馬場で行われていたら、2頭の「余力」はさほどのアドバンテージにはならなかったろう。それが幸運なことに、あの極悪馬場。前走の消耗度が大きくものを言う条件となり、ハイレベル皐月賞の上位馬はガス欠を起こしてしまった。皐月賞の出来をキープしていたアンライバルドも、あの馬場で勝ち負けできるほどのお釣りは残っていなかったということだ。

3着アントニオバローズ、4着ナカヤマフェスタも状態の良さが目立った。それもそのはず、この2頭もリーチザクラウン同様、トライアルは使われずに皐月賞を完敗し、余力十分。アントニオバローズはプリンシパルSを使われたが、弱い相手に負けているように消耗しているはずもない。ナカヤマフェスタは、蛯名得意の出遅れをかまさなければ2着はあったろう。
5着アプレザンレーヴはさほどレベルの高くなかった青葉賞の勝ち馬で、それなりの余力はあったはず。加えて血統的に道悪は大歓迎。切れ味が武器だが、一瞬の反応が鈍いタイプなので、むしろこういう馬場は向いている。
トライアンフマーチの馬体はスペシャルウィークというよりキョウエイマーチ。皐月賞の後半1400mでマークした高速ラップも、この馬がマイラーであることを物語る。アンライバルド、セイウンワンダーと比較すると、この距離では良馬場でも巻き返しは厳しいだろう。

全体的なレベルアップにともない、オープン馬の力量が以前に比べてはるかに拮抗している近年の日本競馬。日程が近い春2冠を両方とも勝つのは、今後ますます至難の業となりそうだ。特に、まったく特性の異なる舞台で行われる皐月賞とダービーの連覇は、よほど能力と体力が相対的に抜けていないかぎり不可能。今年のように3強と目される馬たちでさえ、状態ひとつでコロッと負ける。
となれば「伊藤雄戦法」がかなり有効になってくるわけだが、今後はたして「結果的に」ではなく「確信犯的に」仕掛けてくる陣営は現れるだろうか。仮に今回のロジユニヴァースとリーチザクラウンが確信犯的に皐月賞を軽視したのだとしたら、14着と13着はあまりに負けすぎでお粗末。もう少し格好をつけないと、ファンもJRAも納得すまい。そのあたりの「さじ加減」は相当難しそうだ。
口で言うのは簡単だが、「狙って獲る」のは、やはり超高等戦術。伊藤雄元師にぜひ今年のダービーの感想を聞いてみたいものである。

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05/29/2009

相手難解1強ダービー

今や最も堅いG1となった日本ダービー。近10年では1番人気が7勝、9連対と、ほぼ磐石。今年もアンライバルドの軸は鉄板だろう。
しかし問題は相手。例年なら、皐月賞上位馬と前哨戦上位馬のほかに人気薄を何頭か押さえれば万全なのだが、今年は誰しも取捨に頭を悩ます馬が4頭いるのだ。皐月賞とNHKマイルカップを1、2番人気で完敗した、ロジユニヴァース、リーチザクラウン、ブレイクランアウト、アイアンルックである。

皐月賞で掲示板を外しながらダービーで3着以内にきた馬は、近10年だけでも以下の7頭がいる。

アドマイヤベガ   6着→1着
アタラクシア    9着→3着
スマイルジャック  9着→2着
ザッツザプレンティ 8着→3着
ハーツクライ    14着→2着
アサクサキングス  7着→2着
ブラックシェル   6着→3着

しかしこのうち1、2番人気だったのはブラックシェルとアドマイヤベガだけ。しかもこの2頭の皐月賞はいずれも6着で、惨敗とまでは言えない。また、ロジユニヴァース、リーチザクラウンと同じく皐月賞二桁着順だったハーツクライは、その後京都新聞杯1着で調子を取り戻していた。完調手前のロジユニヴァースも、気性面に爆弾を抱えるリーチザクラウンも、皐月賞惨敗からの直行で巻き返すのは相当厳しそうだ。

一方、NHKマイルカップを1、2番人気で完敗後、ダービーに挑んだ馬は、過去にフサイチリシャールしかいない。その着順は、6着→8着。ブレイクランアウトは9着から、アイアンルックは8着から巻き返しを図るが、こちらも容易ではない。ただし後者はNHKマイルカップで大きな不利を受けている。2400mの適性はともかく、前走を度外視することは可能だ。

生涯一度の3歳G1で人気を集めた馬が惨敗する主な原因は、アクシデントを除くと以下の3つに集約されるのではないか。

1)調子落ち
2)致命的弱点が初噴出
3)実績が過大評価

このうち3)は陣営の関知するところではないが、1)と2)は「この期に及んで…」という深刻な問題。3歳馬が短期間で克服するのは至難の業だろう。ロジユニヴァースは1)、リーチザクラウンは2)、ブレイクランアウトは3)。3つの要素が複合している可能性も否定できない。

それでもこの3頭をバッサリ切りづらいのは、他の馬も当てにしづらいから。アンライバルド以外の皐月賞上位馬は展開に恵まれた感が強く、青葉賞勝ち馬以外のトライアル組は例年ほとんどお呼びでない。
6年前にネオユニヴァースが2冠を達成したときは、2着が青葉賞勝ち馬ゼンノロブロイ、3着は皐月賞着外の重賞勝ち馬ザッツザプレンティ。今年もその線か…。

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05/21/2009

高すぎる2400万のハードル

2005年以降、1,350万→1,750万→2,000万→2,100万と上昇し続けたダービー出走資格ボーダーライン(収得賞金下限)が、今年はついに2400万に達した。ベストメンバーが故障しなければ2,600万。これがいかに高いハードルであるかは、以下のシミュレーションをみれば一目瞭然だ。

新馬・未勝利+500万条件+3歳G32着(リクエストソング)
収得賞金=400万+500万+800万=1,700万

新馬・未勝利+500万条件+3歳オープン(皐月賞までのベストメンバー)
収得賞金=400万+500万+950万=1,850万

新馬・未勝利+500万条件+3歳G22着(デルフォイ)
収得賞金=400万+500万+1,100万=2,000万

新馬・未勝利+3歳オープン+3歳G32着
収得賞金=400万+950万+800万=2,150万

新馬・未勝利+3歳重賞1着(アントニオバローズ・アイアンルック)
収得賞金=400万+2,000万=2,400万

新馬・未勝利+3歳オープン+3歳G22着
収得賞金=400万+950万+1,100万=2,450万

新馬・未勝利+500万条件+2歳オープン+3歳G32着(トーセンジョーダン)
収得賞金=400万+500万円+800万+800万=2,500万

以上のような馬たちは優先出走権がなければ、あっさり足切りされるか、抽選にかけるか、ベストメンバーのように無理使いをして賞金加算を狙うしかないのである。
すべてのG1について言えることだが、なかんずく、競馬の祭典であるダービーは、現状の出走馬決定方法に改善の余地が大ありではないだろうか。端的に言えば、よりチャンスのありそうな馬を、より多く出走させるべきだということだ。
まず、プリンシパルSの上位2頭と青葉賞の上位3頭に与えられている優先出走権。これはいかにも多すぎる。JRAが2歳戦に力を入れ、馬主が馬代金の早期回収をはかり、競走馬の完成時期が早まっている昨今、遅れてきた有力馬などそうそういるものではない。事実、この2つのレースからいまだダービー馬は出ておらず、勝ち馬以外はすべて本番で壊滅している。優先出走権を与えるなら、勝ち馬だけで十分だ。
また、好実績距離がマイル以下の馬やダート実績馬が、通用するはずもない舞台にオリンピック精神で駒を進めるのもいかがなものか。それを避けるための一案として、芝1800m以上の重賞とオープン特別での収得賞金を、たとえば5割増しにするのはどうだろう。もちろんこれはダービー限定の措置で、クラス分けは通常の計算方法で行う。当然、出走資格の順位は分かりづらくなるが、それは「ダービーへの道」とでも称してJRAがHPで発表し、毎週更新していけばいい。「ダービーからダービー」というサイクルを定着させるにも、もってこいだろう。
JRAにとってG1は看板商品であり、その中でもダービーは最高のブランド商品。その価値を高める努力は、決して怠らないでもらいたい。

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05/14/2009

負けられない武豊&ウオッカ

昨年は、自己ワーストタイの重賞3勝に終わった武豊。今年は1~2月ですんなり3勝をあげたが、そのあとが続かない。G1も、ここまで5回騎乗して、2番人気6着(フェブラリーS・ヴァーミリアン)、9番人気6着(桜花賞・アイアムカミノマゴ)、2番人気13着(皐月賞・リーチザクラウン)、3番人気12着(天皇賞春・モンテクリスエス)、1番人気9着(NHKマイルC・ブレイクランアウト)と、掲示板にすら載れていない。ウオッカで挑む今週のヴィクトリアマイルは、是が非でも勝ちたいところだろう。
思えばウオッカは、昨年の天皇賞秋で重賞連敗をストップしたゲンのいい馬。ヴィクトリアマイルを勝てば、そのとき以来のG1V。さらに、同レース初勝利となり、牝馬限定G1完全制覇を達成。そして、JRA全G1制覇に「一向聴」となる。
目下のところ、武豊のG1全62勝の内訳は以下のとおり。

天皇賞春(6勝)
89年イナリワン・90年スーパークリーク・91年&92年メジロマックイーン・99年スペシャルウィーク・06年ディープインパクト

天皇賞秋(5勝)
89年スーパークリーク・97年エアグルーヴ・99年スペシャルウィーク・07年メイショウサムソン・08年ウオッカ

桜花賞(5勝)
89年シャダイカグラ・93年ベガ・94年オグリローマン・98年ファレノプシス・04年ダンスインザムード

宝塚記念(4勝)
89年イナリワン・93年メジロマックイーン・97年マーベラスサンデー・06年ディープインパクト

ダービー(4勝)
98年スペシャルウィーク・99年アドマイヤベガ・02年タニノギムレット・05年ディープインパクト

菊花賞(4勝)
88年スーパークリーク・96年ダンスインザダーク・00年エアシャカール・05年ディープインパクト

エリザベス女王杯(4勝)
01年トゥザヴィクトリー・02年ファインモーション・03年&04年アドマイヤグルーヴ

ジャパンカップダート(4勝)
01年クロフネ・04年タイムパラドックス・05年カネヒキリ・07年ヴァーミリアン

オークス(3勝)
93年ベガ・95年ダンスパートナー・96年エアグルーヴ

秋華賞(3勝)
98年ファレノプシス・02年ファインモーション・05年エアメサイア

皐月賞(3勝)
93年ナリタタイシン・00年エアシャカール・05年ディープインパクト

フェブラリーS(3勝)
03年ゴールドアリュール・06年カネヒキリ・08年ヴァーミリアン

NHKマイルC(3勝)
97年シーキングザパール・01年クロフネ・06年ロジック

有馬記念(2勝)
90年オグリキャップ・06年ディープインパクト

高松宮記念(2勝)
05年アドマイヤマックス・07年スズカフェニックス

安田記念(2勝)
90年オグリキャップ・95年ハートレイク

スプリンターズS(2勝)
90年バンブーメモリー・02年ビリーヴ

ジャパンカップ(2勝)
99年スペシャルウィーク・06年ディープインパクト

阪神JF(1勝)
94年ヤマニンパラダイス

牝馬限定戦6レースのうちすでに5レースを制しているとはいっても、意外なことに、阪神JFとオークスは、もう10年以上勝っていない。その一方、長らく勝てなかったエリザベス女王杯は、21世紀に入ってから4連覇を果たしている。
エリザベス女王杯を初めて勝ったのは、古馬混合戦になってから6年目。その春バージョンとしてヴィクトリアマイルが新設されてから、今年で4年目。過去2着2回の雪辱を果たすには頃合いだろう。
これまでウオッカとの6回のコンビで1勝しかしていない武豊だが、昨年以上の出来で牝馬相手なら、負ける場面はちょっと想像がつかない。22年連続G1勝利は目前だ。

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05/08/2009

今は昔の「マル外ダービー」

バブル末期に新興馬主が買い漁った外国産馬を押し込むため、という不純な動機で新設したG1。要は、天下り先を強引に作ったようなもので、天下ってくる官僚がいなくなれば、当然、存在意義も失われる。外国産馬に大枚をはたく馬主が減り、SS系を中心とする内国産馬が強くなり、クラシックの門戸が外国産馬に開かれたことで、「マル外ダービー」の時代は完全に幕。今や単なる「牡牝混合マイル重賞」となっているのが、NHKマイルカップというレースだ。
今年で14回を数える歴史の中で、このレースがどう変貌を遂げたかは、「外国産馬と内国産馬の出走頭数の内訳」と、「外国産馬が6連勝後、内国産馬が7連勝」という結果が象徴している。

第1回 外国産馬14頭 内国産馬 4頭 優勝馬タイキフォーチュン
第2回 外国産馬12頭 内国産馬 6頭 優勝馬シーキングザパール
第3回 外国産馬13頭 内国産馬 4頭 優勝馬エルコンドルパサー
第4回 外国産馬10頭 内国産馬 8頭 優勝馬シンボリインディ
第5回 外国産馬11頭 内国産馬 7頭 優勝馬イーグルカフェ
第6回 外国産馬 4頭 内国産馬14頭 優勝馬クロフネ
第7回 外国産馬10頭 内国産馬 8頭 優勝馬テレグノシス
第8回 外国産馬 4頭 内国産馬14頭 優勝馬ウインクリューガー
第9回 外国産馬 8頭 内国産馬10頭 優勝馬キングカメハメハ
第10回 外国産馬 2頭 内国産馬16頭 優勝馬ラインクラフト
第11回 外国産馬 5頭 内国産馬13頭 優勝馬ロジック
第12回 外国産馬 3頭 内国産馬15頭 優勝馬ピンクカメオ
第13回 外国産馬 6頭 内国産馬12頭 優勝馬ディープスカイ
第14回 外国産馬 1頭 内国産馬17頭 優勝馬?

今年はついに外国産馬が1頭。そのブレイクランアウトも生産は「Shadai Corporation」だから、実質ゼロと言っても過言ではない。しかしこの馬は、アイアンルックと1番人気を争うであろう有力候補。過去、圧倒的少数派から優勝馬が出た例としては、第6回。ブレイクランアウトと同じく鞍上武豊の外国産馬、クロフネが勝っている。
クロフネほど図抜けた存在ではないし、共同通信杯以来という臨戦過程も疑問だが、このあとダービーに向かうという点でも、ブレイクランアウトはどこかクロフネを彷彿させる。まあ社台グループとしては、同じ勝負服ならキンカメ産駒の内国産馬、フィフスペトルに勝ってもらった方が、営業上はるかに有益なんだろうが。

ともかく、NHKマイルカップの当初の存在意義は完全に消え失せた。今やクラシック有力馬の草刈り場になってしまったレースに、G1を名乗る資格はあるまい。どうしてもG1であり続けたいなら、どんな馬でも通用しそうなマイル戦ではなく、スプリント戦にしてはどうか。合わせて、オークスを2000mに短縮する。「名ばかりG1」がクラシック路線にしゃしゃり出てくるレース体系に不満をもつファンは、決して少なくないはずだ。

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05/01/2009

最強ステイヤーの粘り腰

87年4月3日に生まれ、06年4月3日、ちょうど19歳になった日に没したメジロマックイーン。その産駒もいよいよ残り少なくなってきたが、ここにきて最後のひと花を咲かせている。
昨年はヤマニンメルベイユが中山牝馬SとクイーンSを、ホクトスルタンが目黒記念を勝ち、今年はディアジーナがクイーンCとフローラSを制覇。現在、中央に登録されている現役産駒が12頭であることを考えれば、大活躍と言えるだろう。

中でも注目は、初のクラシック制覇がかかるディアジーナと、4代盾制覇の偉業がかかるホクトスルタン。
ブエナビスタを負かすのは至難の業だが、種牡馬マックイーンの通算300勝目を重賞制覇で飾った強運娘と、鞍上「内田」とのコンビなら、奇跡を期待せずにはいられない。3歳3冠に駒を進めたマックイーン産駒は過去7頭。最高成績は、唯一の牡馬ホクトスルタンの菊花賞4着で、牝馬はエイダイクインの桜花賞6着。ディアジーナには少なくともこの記録を塗り替えてほしい。

エイダイクイン  (98年桜花賞6着)
エスパシオ    (98年ダービー16着)
メジロサンドラ  (99年秋華賞7着)
マターラミツル  (00年秋華賞8着)
ポイントフラッグ (01年桜花賞13着・01年オークス11着)
タイムファアレディ(01年秋華賞8着)
ホクトスルタン  (07年菊花賞4着)

一方、昨年に続いて偉業再チャレンジのホクトスルタン。昨年は、準オープン圧勝直後の格上挑戦で4着に好走。来年こそはと期待は大いに高まったが、目黒記念を勝ったあと、馬体の立て直しに手間取り、ようやく間に合った日経賞は10着と惨敗。大きな変わり身がないかぎり、こちらも勝ち切るのは至難の業だろう。
86年以降、春の天皇賞を勝った馬の前走着順は「16-1-1-5」。2桁着順は1頭もいない。しかし2着となると以下の3頭がいる。

ミスターシクレノン(89年中京記念11着→16番人気2着)
サンライズジェガー(03年阪神大賞典10着→8番人気2着)
エリモエクスパイア(07年日経賞10着→11番人気2着)

20年前のミスターシクレノンは事故みたいなものだろうが、21世紀になってから2頭もいるのは、ステイヤーの減少傾向と無縁ではあるまい。サンライズジェガーは父系に、エリモエクスパイアは母系にスタミナの裏付けがあった。最強ステイヤーの息子なら、仕上がりひとつで2着は十分ありそうだ。

天皇賞にはもう1頭、マックイーンの血を引く馬が出走する。マックイーンを母の父にもつドリームジャーニー。勝てば86年以降初となる、マル父ブルードメアサイアーによる春盾制覇。しかし、小回り2000mがベストで、斤量58キロの実績もないこの馬に、一発を期待するのは酷だろう。掲示板に載れば御の字か。

ラストクロップは現2歳の2頭。母の父がブライアンズタイム、母の母がカーリアンの全妹という牝馬、メジロイングリッドと、母の父がエルコンドルパサー、母の母がメジロラモーヌという牡馬、メジロチェスター。メジロ牧場渾身のこの良血2頭から目が離せない。

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