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12/02/2010

世紀のJCを振り返って

ジャパンカップは府中のB指定席で観戦した。パトロールビデオ(正面からと斜め前からの2種類)も穴が開くほど何十回と見た。その上で、メディアやネットに氾濫している回顧・見解・感想の類を読むと、同じ理由で首を傾げたくなるものが多いことに驚かされる。
レース直後の感情的な発言には目を瞑ろう。JRAの対応に不備があったのも事実。降着ルールや騎乗スタイルに対して多様な考え方があるのもわかる。問題は、「実際に起こったことを正確に理解する」という客観的分析が、あまりにできていないことだ。
素人ブロガーや掲示板の住人ならまだいい。しかし、世間的には専門家とみなされているような人間が、パトロールビデオをろくに見ていないか、見てもわからないか、その両方と思えるコメントを発しているのには呆れてしまう。見識不足か怠慢かその両方なのだろう。まあ、「事象の上っ面だけとらえてものを言う」のは、競馬に限らず、日本のメディアのお家芸ではあるが。

具体的に言おう。今回、多くの人が見逃している重要なポイントは、「不利が発生するまでブエナビスタとローズキングダムの脚色に差はなかった」ということだ。確かに、馬体が合うまでは、追い込んできたブエナビスタの勢いが勝っていた。しかしそこからは2頭による叩き合いが始まっている。そのとき筆者は瞬間的に、スミヨン鞍上のトーセンファントムとローズキングダムが叩き合った東スポ杯を思い出し、このままゴールまで2頭のマッチレースになると確信した。
ところが、7~8完歩叩きあったところで、内からヴィクトワールピサが斜行。これでローズキングダムは1度目のブレーキ。実は、この1回目のアクシデントをグリーンチャンネルの中継映像は捉えていない。実況アナウンサーは「おっとローズキングダム、ちょっと挟まった体勢だ」と反応したが、カメラはジャミールやペルーサなど外の馬たちへパンしていたからだ。そして引いた映像に切り替わったとき、ブエナビスタとローズキングダムの間には約半馬身の差が開いていた。
このモンタージュが多くの人に、「ブエナビスタがローズキングダムを交わし去った」という印象を与えたのは間違いあるまい。その先入観があるため、2回目のアクシデントは不利の大きさほど大事とは映らず、しかも今度は実況が無反応。ブエナビスタがここでさらに突き放した印象を与えた。「ローズキングダムまた前が詰まった」と実況していれば、少しは違ったろうが。ちなみにフジテレビの中継は、映像がアクシデントをすべて捉えていながら、実況アナウンサーはブエナビスタの名を連呼しただけ。お粗末としか言いようがない。

再々加速してヴィクトワールピサを交わしたパフォーマンス(この瞬発力はスゴイの一語)と過去の末脚実績から判断して、ローズキングダムが不利を受けなければ最後まで伸び続けたのは間違いない。受けた不利は、筆者の見立てでは、着差で1馬身半から2馬身。あの流れであの位置からなら33秒台で上がれるはずの馬が34.2秒だから、タイム差でコンマ2~3秒。馬体が合っていたときから入線時までに開いたブエナビスタとの1馬身3/4差、コンマ3秒差と計算上はほぼ一致する。
「勢いは完全にブエナ」とか「不利がなくてもブエナが完勝」というのは、客観的分析を欠いたイメージ先行の結論。不利が具体的に何馬身なのかを明示した「ブエナ強かった論」には、今のところ出会ったことがない。不利がなくてもローズキングダムが勝っていたとは言わないが、勝っていた可能性はある、少なくとも僅差のデッドヒートになったとみるのが、この世紀の一戦を振り返るときのスタート地点であるべきだ。

筆者が見たかぎり、レース直後に最も真っ当な分析をしていた著名な専門家は、水上学氏。そのブログ(http://mizukami-manabu.cocolog-nifty.com/)では、ほかにも裁決などに対する、なるほどという意見も述べています。
そんな氏が「今回見た範囲内で最も冷静かつ客観的かつ説得力あるレース映像分析」と評した、調教厩務員、大西貴久氏のブログ(http://ameblo.jp/takaoni7130/)と、筆者がよく拝見するMahmoudさんのブログ(http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-10721507255.html)もぜひご一読を。同様の見解を実に分かりやすく、説得力をもって示しています。

ちなみに筆者の勝負馬券は、ブエナビスタ1着、ローズキングダム2着の3連単フォーメーション。感情的にはスミヨンへの怒り一色です(笑)。

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