極小牝馬の離れ業
現在、ローカル競馬場で開催される古馬牝馬限定重賞は、中京の愛知杯、札幌のクイーンステークス、福島の福島牝馬ステークスの3鞍だけ。いずれも荒れるレースとして知られるが、先週の福島牝馬ステークスは、なんとブービー15番人気のマコトブリジャールが制覇。86年以降、JRA重賞を15番人気以下の馬が勝ったのは、これが22例目となった。
このマコトブリジャール、今走の超人気薄Vもすごいが、それ以上に驚かされたのが前走の「シンガリ18着」。86年以降、15頭以上立てのレースでシンガリ負けを喫した直後のJRA平地重賞を制した馬は、同馬が8頭目。18着からの巻き返しとなると3頭目の快挙である。
シンガリ18着→1着
テイエムプリキュア 08/12/20愛知杯(9番人気) →09/01/18日経新春杯(11番人気)
メリッサ 10/07/18アイビスSD(1番人気)→10/08/15北九州記念(5番人気)
マコトブリジャール 16/01/16愛知杯(17番人気) →16/04/23福島牝馬S(15番人気)
シンガリ17着→1着
トーワウィナー 96/06/09安田記念(17番人気)→96/6/16阪急杯(3番人気)
ダイワメジャー 04/10/31天皇賞秋(12番人気)→05/04/03ダービー卿CT(3番人気)
シンガリ16着→1着
ロサード 03/05/18新潟大賞典(4番人気) →03/08/17小倉記念(4番人気)
マイネルモルゲン 04/03/21東風S(2番人気) →04/04/04ダービー卿CT(7番人気)
クリノスターオー 14/04/19アンタレスS(9番人気)→14/05/24平安S(12番人気)
マコトブリジャール以前の7頭の「前走シンガリ」や「今走1着」には、以下のようなそれなりの原因がある。
テイエムプリキュア 今走は最軽量49キロでノーマークの逃げきり
メリッサ 前走は初めての直線競馬→好実績の小倉替わりで斤量2キロ減
トーワウィナー 前走は家賃が高く距離も長い→連闘で得意距離に短縮
ダイワメジャー 前走はノドの疾患→手術してリフレッシュ
ロサード 前走はぶつけられる不利→リフレッシュして得意の小倉
マイネルモルゲン 前走は直線で挟まれる不利→斤量2キロ減
クリノスターオー 前走は初めての後方競馬
しかしマコトブリジャールの場合、前走の大敗原因は特に見当たらず、今走の激走原因も、オープン3着があるコースへリフレッシュして臨んだことくらいのもの。上記8例の中では最も説明がつきづらい巻き返しと言っていいだろう。
さらに今回もうひとつ、同馬は快記録を残した。86年以降2頭目、4歳以上馬としては初の「馬体重410キロ未満でのJRA古馬重賞制覇」である。
388キロ クールハート 3歳牝 87年関屋記念
402キロ マコトプリジャール 6歳牝 16年福島牝馬S
ちなみにクールハートの「388キロ」は、JRA重賞優勝馬の86年以降の最低記録。ほかに300キロ台で勝ったのは、スエヒロジョウオー(390キロ・92年阪神3歳牝馬S)と、マイネレーツェル(396キロ・08年フィリーズレビュー)のみ。一方、4歳以上牡馬による最低記録は、ツインターボが93年の七夕賞を5歳で制したときの「412キロ」である。
天皇賞春優勝馬の86年以降の最低馬体重は93年のライスシャワーの430キロ、最高馬体重は90年のスーパークリークの520キロ。キタサンブラックあたりに最高記録更新の期待がかかるが、はたして…。
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